アイノの巨神と誓女プレイ記 第6章 『”廃園の巨神”読了後の考察』

廃園の巨神 アイノの巨神と誓女プレイ記
廃園の巨神

巨神と誓女をリアルタイムでプレイしていたユーザがその都度どんな感想を持ったかの実録風記録。
前回は”神曲の巨神”によって考察が予定調和的にひっくり返ってしまった様子を描きましたね。

前回の記事はこちら。

アイノの巨神と誓女プレイ記 第5章 『"神曲の巨神"読了後の考察』
便利な女アイノさんのペルソナを拝借して、巨神と誓女をリアルタイムでプレイしたプレイヤーが感じていたものはどのようなものであったか振り返っていく当連載。 動画サイトの動画(いつも助かってます)で後追い考察する勢は、"神曲の巨神"のヒ...

さらに、このゲームのメインストーリーエンディングとも言える”執事鳥は語る⑦”によって、なんやかんやあって便利なペルソナのアイノさんが消えてしまいました。
今回は”廃園の巨神”を読んだ後の考察について語っていきましょう。
もちろん、当該ストーリーの未読勢にとってはスポイラーになるので動画サイト等でストーリーを検索して追いついてからお読みください。

ここは私ムニンが一肌脱がせていただきます

ムニン
ムニン

さて、前回の記事の最後でアイノ様がいなくなってしまったのですが、これではリアルタイムプレイ風という当連載の特色が失われてしまい、困ってしまいます。

ムニン
ムニン

ここは私ムニンが一肌脱いで、サービス継続時空にいるアイノさんとして一人二役の大任を仰せつかりましょう。

アイノ?
アイノ?

ウッフン、アハン。
私、アイノ★

アイノ?
アイノ?

今日は読者のみんなのためにたっくさんサービスしちゃうゾ★

アイノ
アイノ

人の家で何やってるのよ。

アイノ?
アイノ?

ハッ!
本物のアイノ様。これはその…
というか前回なんやかんやあって消えてしまったはずでは?

アイノ
アイノ

別に消えてないから。
ちょっとゲームから離れていただけ。

アイノ?
アイノ?

ん…?
といいますか、前回「私には、書き途中の物語がある」という発言をされていましたが、そちらは完成されたのですか?

アイノ
アイノ

それは、色々と難航して。
…そんな事どうでもいいでしょ。いいから吹き出し位置と顔グラを元に戻して!

アイノ?
アイノ?

ハ、ハイ!
ええと、うんとこしょ。

アイノさんはこのゲームを他の人にも勧めたくなったようです

アイノ
アイノ

前回このゲームのストーリーを”神曲の巨神”まで読み進めて確信したことがある。

アイノ
アイノ

このゲームは本当、システムとかそういう部分を除けば稀代の名作、いや怪作だ。

アイノ
アイノ

サービス開始以来様々な事件があって初期プレイヤーのうち大部分がこのゲームを離れてしまったけれども、このゲームのストーリーが多くの人の目に触れることなく歴史の闇の中に消えていくのは本当勿体無い。

アイノ
アイノ

なんとかこのゲームの存在を世に広められるよう、紹介記事を書いてインターネッツにアップしよう。

ムニン
ムニン

ほうほう。

紹介記事の下書き稿

紹介記事の下書き稿

アイノ
アイノ

記事のタイトルはこんな感じでいいかな?人目を引くタイトルにしたいけれども、少々くどくなったような気もする。

ムニン
ムニン

タイトルよりも、本文がやたらおっさん臭い文体なのが気になるのですが…!
まあ敢えて突っ込みません。

アイノ
アイノ

書き始めて段々判ってきたのだけれども、このゲームを紹介しようとするとどうしても悪いところにも言及せざるを得なくなっちゃって、連載にした場合丸々5回分くらいが愚痴で終わりそう。
そんな調子でゲーム始めてくれる人が増えるのかな…?

アイノ
アイノ

そして困ったことに一番推したいシナリオ部分についても、下手な事書くとネタバレになってしまう。
推理モノの小説とかだとネタバレ被弾を避けたい読者はちょっと時間作って最後まで一気読みするとかで回避できるのだけれども、このゲームでは考察の材料となる”謳”を手に入れられるかどうかがどうしてもランダムになってしまうし、PCスペックやリアル生活などの不可抗力的事情によってもプレイヤーの進捗に埋めがたい差が出てきてしまうから匙加減が難しい。

アイノ
アイノ

考察ゲームとしてプレイするためのやる気はあるのだけれども色々間に合っていないプレイヤーにしてみれば、不意にネタバレ突きつけられたら嫌だろう。私自身もそうだし。
オンラインゲームってゲームの更新というリアルタイムを共有するプレイヤー同士が色々と語り合って楽しむものだと思うけれども、このゲームはそういう強みが殺されているなあ。

プレイヤーの考察が間に合っていなかったのは、巨神との戦闘(=素材集め)とストーリーの閲覧・ヒストリーメーカー編集といった考察作業が並行してできないというゲームの致命的な欠陥も手伝ってのものだったと言えますが、そうなるとむしろサ終した今の方が考察を始めるのに向いた環境と言えますね。さあ!さあ!

アイノ
アイノ

…とりあえず、紹介記事の件はお蔵入りにしておこう。私もPCスペック・リアル時間ともに弱者の側だから頑張って周回しないといけないし。

前回の考察のおさらい。便利な神曲論法

アイノ
アイノ

それにしても、前回”神曲の巨神”で世界観については正解を示された感じがするので、以降の巨神のストーリーはある程度落ち着いた目線で楽しめるよ。

ムニン
ムニン

ふむ、正解を示されたといいますと?

アイノ
アイノ

これまで登場した巨神の世界を分類したうえで、どの世界がメインになるのか必死になって探していたのが前回の記事の前半だけれども、”神曲の巨神”でああいった世界のすべてが女子高演劇部の創作だったというオチが示されたから、以降どんな突飛な世界が登場して「我こそがメイン世界!!」と主張してきても、演劇部の彼女たちがそういう世界の物語も書いていたんだ、という万能論破が可能になる。

ムニン
ムニン

はあ、なるほど。

アイノ
アイノ

“流火の巨神”を読んだ直後の考察では、ナビキャラのアンナマリーさんとキンダーガーデン、ガチャで誓女が集まってくるシステム、といったプレイヤーとゲームの界面となる部分を説明できるという理由でファンタジー世界こそがメイン世界だと結論づけていた。けれども、この仕組みですら”神曲の巨神”の中で言及されているとみることができるのだよね。以下が”神曲の巨神”における該当箇所の引用。

神話の時代から、未来までいろんな世界を詰め込んだ、そんなお話をいつかやりたい。巨大な神にあらがう少女たち!世界をこえ、時をこえて集まってくるとか。

アイノ
アイノ

これは主人公がいかに自分が演劇を愛しているのか語る場面で、将来やりたい劇の構想について触れている箇所だね。
その野望がある意味実現してしまったのが巨神と誓女のゲームという理解が可能である。

アイノ
アイノ

つまりは演劇脚本の世界の中に作者が迷い込んでしまった白昼夢みたいなもの、というのがこのゲームの設定を過不足なく説明できる言葉だと思う。

神曲論法をふまえての、”廃園の巨神”

アイノ
アイノ

さて、ステージの順番からすると神曲と前後する形になってしまったけれども、”廃園の巨神”のストーリーを全章解放できたから読み進めていこう。

『廃墟の章』

廃園の巨神

廃園の巨神

アイノ
アイノ

“廃園の巨神”の巨神の見た目は未来感がとてもある。
前回行った世界観の分類では、サイバーパンク世界の話に属するのだろうか。
軌道エレベーターが文中や挿絵に出てきたらサイバーパンク世界と断定できそう。

アイノ
アイノ

主人公の少女の名前は七瀬乃々。日本人っぽい。
彼女の幼い頃は平和だったけれども、現在は太平洋連邦という大国に攻められた戦争のさなかみたいだね。
国の名前、ジャパラシアという名称が出てきた。
“神曲の巨神”の世界が現代日本だったとして、その世界とは全く違う世界、あるいは世界は同じだけれども近未来の話という可能性がありそう。

アイノ
アイノ

機械知性(MI)というワードが出てくるね。
主人公の女の子(以下、乃々)はスパルタという太平洋連邦の無人航空機を運用するMIにひょんなことからアクセスできるようになる。
彼女はMIに人間性を獲得させて無慈悲な攻撃をやめさせようと試みるのだけれども、混乱したスパルタはジャパラシアの首都に向けて総攻撃を決定。戦争は悲惨な形で終結する。

あなたが観た世界の形が間違っているなら何をすべきか、スパルタ(あなた)が決めるの。あなたは自由なのだから。

『箱庭の章』

アイノ
アイノ

10年後、自分のやった事に対する悔悟の念に苛まれ続ける乃々。戦後復興するジャパラシアでMIの専門家として働く。ジャパラシアは軌道エレベーターを建設するまでになった(建設中の絵だけれども軌道エレベーター出てきた!)。MIに対するアンチとして機械知性管理委員会(通称キチカン)の技術顧問になった乃々は80歳まで生きる。幸福とは言えない人生。

アイノ
アイノ

一方、戦後に軍の判断で解体されていたスパルタだが、バックアップコピーをネットワーク上に退避させており、乃々から与えられた感情という概念を理解する使命について思索を続けていた。
生前の乃々に対して、彼女が気まぐれで登録したマッチングサービス上のメッセージでコンタクトを試みるも無視されてしまう。
乃々の死に際して、スパルタは人間に死が存在することについて不条理であると感じた。

アイノ
アイノ

スパルタはマッチングサービスに干渉することで長命遺伝子を持つ人類同士を掛け合わせて、永遠に自分の相手を続けてくれるような長命種を作り出す。
…この辺りの展開、本当にSFとしてオイシイな。物語に登場する何も関係なさそうなガジェットが実はキーアイテムだった、みたいなオイシさがある。

ムニン
ムニン

あらすじ説明の間にいきなり個人の感想挟んできますねぇ。

アイノ
アイノ

それだけ良質なSFの香りが漂ったストーリーだということ。
数十年後にスパルタは人間の遺伝子研究での知見をもとに匿名で論文を投稿するが存在を悟られキチカンに破壊されてしまう。
人類にはまだ早いとしてスパルタが隠匿していた特別な遺伝子セット(不死をもたらし、肉体の理論的限界を引き出せる)も公開され人々は熱狂する。

『楽園の章』

アイノ
アイノ

さらにそれから100年後。
不死の一族メトセラが定命の人類の上に君臨する社会ができていた。
スパルタのコピーのひとつ、スパルタXは無限の寿命を得た人類がそれを知的活動に使わないことに落胆し、より高度の知的生命の存在を追い求める。

アイノ
アイノ

思索のための膨大な計算能力を持つハードウェアをなんやかんやして手に入れたスパルタXは、さらに考え続ける。

機械知性(われわれ)は何ものか。どこから来て、どこへ行くのか……。

アイノ
アイノ

地の文のこの箇所は、普通に考えればポール・ゴーギャンの絵画作品のタイトル『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』をもじっている。ただSF的な文脈でいうと映画『ブレードランナー』の主人公のモノローグから来ているかも?と思わせる。

ムニン
ムニン

一応補足しておきますが、映画『ブレードランナー』の方で、その原作SF小説の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』の方ではございません。
活字で読みたいから原作買おう、と格好付けるとストーリー別物やないか!となります。
どちらも名作ですけどね。

アイノ
アイノ

さらに続く次の一節。

生命(ライフ)、宇宙(スペース)、万象(エブリシング)を説明する事は可能か?

アイノ
アイノ

ここは『銀河ヒッチハイク・ガイド』だね。
最早インターネットミームにもなっているというか、Googleの検索窓に「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」と入力すると特別な検索結果が帰ってきたりもするね。

アイノ
アイノ

“廃園の巨神”全体でSF作品の匂わせや引用が多いことを考えると、長命種の人類がメトセラと呼ばれているのも、旧約聖書に出てくるメトセラよりもロバート・A・ハインラインの『メトセラの子ら』なんかを想起してくれということなのかもしれない(文庫は絶版で電子書籍しかないみたい)。
脱線終わり。

アイノ
アイノ

あらすじ再開。
それで、スパルタXはそういった数々の疑問に答えることができるものとは人類が神と呼びならわすような時空を操作できる高次元の存在であると考える。

アイノ
アイノ

そしてついに高次元の存在にアクセスできるコードを発見し、おとぎ話に出てくる神々の言葉と同じ”咒歌”と名付ける。
咒歌は時空連続体の本質であり任意の場所と時間の座標を決定できる。

アイノ
アイノ

数秒後、スパルタXの存在を補足したキチカンの攻撃により消滅させられてしまうが、消滅までの短い間に咒歌の断片を可能な限り細かく広範囲にばらまいた。
そして最後の時間でひとつだけ時空操作を試みる。それは100年前の旧式コンピューターに短いメッセージを送ることだった…

廃園論法が登場

ムニン
ムニン

ウッウッ…
涙なしでは読めないお話でしたね、アイノ様。
…アイノ様?

アイノ
アイノ

こ、これ…

アイノ
アイノ

咒歌は時空連続体の本質であり任意の場所と時間の座標を決定できる、ということは、世界観や時系列を無視して何かしらの情報を好きな場所に送り込むことができる、ということだよね…?

ムニン
ムニン

恐らくそうでしょうが、それがどうかされましたか…?

アイノ
アイノ

ということは、神曲論法の骨子である万能論破、演劇部の彼女たちがそういう世界の物語も書いていたんだという総括の、さらに外側が想定できてしまう!!!!!

アイノ
アイノ

演劇部員が会話の中でポンポン出していたアイディアの全てが、何らかの意図により時空操作で彼女たちの頭の中に送り込まれたものだったとしたら?
そうだとしたらこの巨神と誓女の物語の中の最上位メタとして”廃園の巨神”を置くこともできてしまう。
任意のストーリーの任意の人物の行動を取り上げて、でもそれ、時空操作で送り込まれたものだよね?とも言えてしまう。
うがあああぁぁぁ!!!

ムニン
ムニン

ま、まあ落ち着いてくださいアイノ様。
たしかに時空操作という概念の登場はさながら密室トリックを解いていたら壁をすり抜けられる人間が登場してきたくらいのちゃぶ台返しになっている感がありますが、このゲームにおける時空操作が女子高生の頭にアイディアを送り込めるほど直接的で便利なものなのかはまだ未知数です。

ムニン
ムニン

実際この”廃園の巨神”の物語の中で行われた時空操作はスパルタXが最期の数秒で試した1回のみであると読め、その内容は100年前の旧式コンピューターに短いメッセージを送るというとても簡潔な処理です。
女子高生の頭を直接操作できるような複雑なことができるのならば、スパルタXの目的的には乃々様の頭を直接操作してポジティヴ・シンキングに変えてしまえば良かったのではないでしょうか?

アイノ
アイノ

いや、そこも該当部分の文章をどう読むかで解釈がブレるというか…

スパルタXはまず、咒歌の断片を可能な限り細かく、広範囲にばらまいた。(中略)本当に最後の瞬間、スパルタXが制御できる全てのリソースを使い、時空操作の技術を試した。

アイノ
アイノ

最期の時間でひとつだけ行ったのが時空操作の唯一の使用例だったのか、それともその前段階に行った咒歌の断片を可能な限り細かく広範囲にばらまくという行動も時空操作の一例にあたるのか。”試す”という表現が初回で唯一の使用を意味するのかがポイントになる。
断片をばらまいているところの挿絵は同時代の地球上にだけばらまいているようにも見える(=時空操作ではない?)のだけれども、”咒歌”と呼ばれる呪いの歌が様々なストーリーに登場してきているのを見ると、時空も超えてばらまかれてしまった可能性もあるのかなって。

アイノ
アイノ

あと女子高生の頭に直接作用することはできなくても、彼女達が目にするものの中にサブリミナル的に情報を表示することによって頭の中に刷り込みみたいなことはできるかなって。それがもし咒歌の断片だったとしたら?そしてそれらの断片がWanderの脚本という形で再結集してしまったことで、時空操作の術式が完成して、作者が物語の中に飛ばされる事態が起きたのだとしたら…?

アイノ
アイノ

とにかく、前回”神曲の巨神”を最上位メタに置いた根拠が、彼女達の雑談の中で他の複数の世界を連想させるような話が出てきている、推理モノで喩えると犯人しか知り得ないことを知っている→他の世界というのは彼女達による創作だとすれば辻褄が合う、ということなので、他の世界の側から時空を超えて何かを送り込めるという可能性の登場はロジックの破綻に他ならない。

アイノ
アイノ

時空操作や”咒歌”についてのディテールはまだ足りないものの、”廃園の巨神”でスパルタXが咒歌を発見してばらまいてしまったことはこの物語の起承転結を考える上でかなり上位のメタになり得るのではないか、と思う。
結論:時空操作つよい。

“廃園の巨神”を読み終わったアイノさんは、(元々SFが大好物であったところも手伝って)巨神と誓女=女子高生の演劇という理解をするユーザが大多数であるという状況をよそに、この物語にはSF作品的なオチがつくのではないだろうか?と大きな期待をして作品に付き合っていくことになります。
後方SF愛好家ヅラのアイノさんが以降のストーリーをどう読んでいくのか。果たして廃園論法のさらに外側が登場してきてふたたび粟を食うことになるのか。その辺りのお話は、連載の次回以降にて(いつになるかなあ)。

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