2021年生まれで有望そうな馬を指名して独りで勝手にPOGもどきをやるよ、という企画。
前回はJRA-VANのPOG動画から馬体でセレクトした数頭と、種牡馬限定POGとしてレインボーライン産駒(と、おまけでオルフェーヴル産駒1頭)を見繕って解説した。気になる方は下の記事をチェック!
今回は種牡馬限定POGの続き。デビュー初年度にいきなりダービー馬を輩出したサトノクラウン産駒の中から有望株を指名しよう。これもレインボーラインと同じく血統表だけを見てズブの素人が語るもので、馬体とか厩舎とか牧場とか成長具合とかの情報はまるで無視しているので注意。
サトノクラウン産駒の成功配合を分析してみる
血統表を見て語るにしても、サトノクラウンにどういう配合が向いているのかまず成功例を持ってきて吟味しないといけない。2020年生まれの産駒で一番の稼ぎ頭はダービーを獲ったタスティエーラ。現時点で5億円近い賞金を稼いでいる。だが次点、さらに下の数頭となると獲得賞金はぐっと下がり、2番手のトーセンローリエは4000万円強、3番手ウヴァロヴァイトが3000万円強、その下ニシノコウフク、サトノクローク、メイショウコギクが1500万円付近、11番手になるともう1000万円を割ってしまう。
こうなるとダービー馬こそ輩出しているもののどういった牝馬につけても成功馬を出せるお助け種牡馬とはなれなかったと見るべきかもしれない。サトノクラウン自身の配合がサンデーフリーキンカメフリーという相手を問わない血統であっただけに、成功馬を出すレンジが狭そうなのは残念なお知らせである。が、そうした事実が発覚した後でも”うまく配合すればダービー馬を出せる”という謳い文句ならききそうである。ダービー馬の”うまい”配合を見てみる。
成功例のタスティエーラから成功の要素を抽出
母父がサンデーサイレンス産駒のマンハッタンカフェで、母母父がフレンチデピュティ。母母母父がノーザンテーストで5代内のクロスはNorthern Dancer5×5。
ダービー馬の”うまい”配合がサンデーフリーだったとしたらつけられる牝馬の候補が激減してしまうところだったろうが、とりあえず母父がサンデーサイレンス産駒の牝馬でも安心してダービー馬を出せるようだ。
成功配合から手がかりとなりそうな要素を抽出してみる。
- 母父マンハッタンカフェ
- 母母父フレンチデピュティ
- 母母母父ノーザンテースト
こうして抽出してみるとそれほどレアすぎる条件が求められているわけでは無いような気がする。が、しかし…
たとえば父サトノクラウン、母父マンハッタンカフェという配合の2020年生まれ産駒はタスティエーラ含めて6頭いるけれども、中央で勝ち上がっているのはタスティエーラ1頭、他5頭の成績は合わせても地方1勝である。
そうなると、母父マンハッタンカフェの馬なら無条件で活躍が期待できるというわけではない。何か別の要素が作用してダービー馬の成功例が生まれたのだと考えた方が良い。これは母母父フレンチデピュティについても、母母母父ノーザンテーストについても同じだろう。
サトノクラウンの仔は体を大きく出す仕組みが入っているかどうかが鍵かも
ここで唐突にタスティエーラの馬体重について見てみる。デビュー戦が484kgで、その都度の仕上げの度合いにもよるが480kgの上下5kgくらいとそこそこ大きく出ている。
父馬サトノクラウンの現役時の馬体重は、デビュー戦が468kg、3着となったダービーが470kg、5歳になって初めて490kg台に乗せて最高体重は引退レースの6歳秋ジャパンカップの500kgというように推移している。タスティエーラの体重が最終的にどうなるかはわからないが、父馬よりも大きいかあるいは早熟の馬体であるとみて良いだろう。これはざっと見渡す限り他の産駒の平均値よりも大きい。他の産駒が460kg以下とかどうも父馬と比較して気持ち小ぶりな馬になりがちなのとは対照的である。まあ父馬より小ぶりになりがちなのもおそらく理由があって、サンデーフリーのサトノクラウンにはここぞとばかりにサンデーサイレンス持ちの牝馬がつけられることが多いが、サンデーサイレンス自体が相手を選ばないとなかなか現代競馬の基準でいう大きい仔を出しにくい血統である。
サトノクラウンをつけた牝馬がサンデー持ちであるにしろそうでないにしろ、父馬と同じかそれよりも体を大きく出す仕組みが入っている仔を有望株として捉えた方が良いのではないかと思う。
タスティエーラの血統表の中のデカ馬要素
タスティエーラのお母さん、パルティトゥーラの血統表を下にリンクを貼ったnetkeibaの5代血統表などで見てほしい。
先ほど抽出したとおりマンハッタンカフェがいてフレンチデピュティがいるのだが、マンハッタンカフェの母父母父のところにBoldnesianという牡馬がいて、この馬が名前から推測できるようにBold Ruler産駒である。そしてパルティトゥーラの母方血統で母父母母父の所を見ると、ここにもBold Rulerの名前が確認できる。さらに、母母母母父の所にいるSecretariatもBold Ruler産駒だ。つまりパルティトゥーラの中には血量としてはそこまで多くないもののなんと3方面からBold Rulerの血が入ってきている。
Bold Rulerというのは前回レインボーライン産駒やオルフェーヴル産駒の有望株を探す際の目印としたSeattle Slewのひいじいさんである。この馬自身はどちらかというと小柄であったものの馬体の大きな産駒を輩出し、現代にも主にSeattle Slew系を通じてデカ馬因子を伝えている。
つまりタスティエーラの体がサトノクラウン産駒にしては大きく出ているのはこの母方に隠されたデカ馬を出す仕組みが作用しており、それがクラシック期における活躍に繋がったと見て良いのではないだろうか。
2021年生まれサトノクラウン産駒の中から有望株をピックアップ
したがって今回2021年産駒の中からピックアップするのは母方にBold Ruler由来のデカ馬因子が揃っている馬。手作業でピックアップするのでもしかしたら数え落としをしている馬もいるかもしれないが、目についた馬をとにかく挙げていく。
母馬にBold Rulerの系統を3筋持つタイプ
タスティエーラと同じ3筋。ちなみにタスティエーラの場合Bold Rulerの血量の合計は1/128 + 1/64 + 1/128で1/32となる。Bold Ruler自体の復活を試みているわけではないからこの血量の情報は完全にどうでも良いけれども。
ワンダーヒナタ(ビーマイステディの2021)
母父ヴィクトワールピサの牝馬。ということはネオユニヴァースを介してサンデーサイレンスの血が入っている。血統表を見ると父サトノクラウンと同じような要素を持つ母馬なので、なかなか日本の馬っぽくないクロスが発生している。まずMiswakiとHopespringsforeverの全きょうだいによる4×4クロス、Mr. Prospectorの5×5×5クロス、Machiavellianの5×4クロス。
Bold Rulerの筋の話なのだが、本馬にとって母母父の位置にA.P. Indyがいる。血統表の中のBold Rulerを探そうとするときに、このA.P. Indyの名前を見かけたらラッキーと思って良い。なにしろA.P. Indy自体が父馬Seattle Slewの系統と母父Secretariatの系統の2つのBold Ruler系をクロスさせて爆発力を得ようとした配合だからだ。ラッキー、2筋みっけ!となるのでBold Ruler系をカウントする仕事につきたい人はぜひ覚えておいてほしい。
残りの1筋は母母母父の位置にStorm Catが居るのだが、この名前を見かけたらまあまあラッキーと思って良い。Storm Catの母父がSecretariatなのである。
A.P. Indyの2筋とStorm Catの1筋。血量的には1/128 + 1/64 + 1/128で奇しくもタスティエーラと同じ1/32。
ケイティバローズの2021
牝馬。母父マンハッタンカフェはタスティエーラと同じ。つまりマンハッタンカフェの母父母父にBoldnesianが居て、これが名前からわかるようにBold Ruler産駒。
そして本馬の母母母父を見るとA.P. Indyが。つまり2筋のBold Rulerがあってこれで合計3筋である。血量的には1/128 + 1/128 + 1/128で3/128。
本馬はまだ競走馬名の情報が無い。母馬は中央ダートで4勝をあげていて、体重も500kg位の大型馬だったようだ。
母馬にBold Rulerの系統を2筋持つタイプ
サトノラクローヌ(ウェントワースの2021)
北海道セレクションセールで3850万円で落札されたサトノ冠を持つ馬。母父はストリートセンスで、サトノクラウン側のものと合わせてMachiavellian5×4のクロスが出来ている。牡馬だがHail to Reason系が入っていないのでもし活躍して引退したらサトノクラウンと同じようなポジションの恩恵に与れるだろう。
母母父父にStorm Catが居る。母母母母父はSeattle Slew。これにより2筋あるBold Rulerの血量は1/128 + 1/256で合計3/256。母馬は地方で4戦しか走っておらず(未勝利)デビュー時体重466kg。
アンビシュー(レッドマーキュリーの2021)
北海道サマーセールで1430万円で落札された牝馬で厩舎は池江厩舎らしい。
母父マンハッタンカフェ。つまり本馬の母父母父母父父と辿るとBold Ruler。その他母母母父に居るボールドラツドというのがBold Ruler産駒になる。カタカナになっていることからわかるように、1977年に日本に輸入され種牡馬をやっていたらしい。
血量は1/128 + 1/32で5/128。現役時の母馬は中央で新馬戦のみの勝利。体重は458kgでデビューして最大で494kgまで行っていたがそのレースは大敗している。体重444kgのレースの次走484kgで出てきたりと適正値がわからないが産駒の体重も見るかぎり470kg付近が適正だった馬かもしれない。
コワン(シャインダイアンの2021)
名前の綴りはCoin。母父エンパイアメーカーの牝馬。母母父のアグネスタキオンはBold Ruler持ちのサンデーサイレンス産駒ということでマンハッタンカフェやフジキセキと一緒に覚えておいた方が良い。アグネスタキオンの母父父Raja BabaがBold Ruler産駒にあたり、本馬から見ると母母父母父父父がBold Ruler。
もう一本の筋は母母母母母父のボールドラツド。つまり血量は1/128 + 1/128で1/64。
半きょうだいはいずれも500kgクラスの大型。
レンゴクサクラ(アドマイヤオウカの2021)
北海道オータムセールで440万円で落札された馬。シンボリ牧場産の牡馬。母父はシンボリクリスエスで、これもBold RulerというよりSeattle Slew持ちの馬として覚えておいた方が良い。1筋目のBold Rulerは母父母父父父父の位置。
もう1筋は母母母母父Secretariatの所。つまり血量は1/128 + 1/64で3/128。
サンデーサイレンスは母母父の位置に入っている。半きょうだいを見ると小さく出てしまっている仔もいるためサンデーサイレンスの影響が大きいのかも。
ミエノソニック(ミエノサクシードの2021)
牡馬。母馬は中央で6勝をあげたミエノサクシード。母父ステイゴールドで母母父の位置にA.P. Indyがいるため自動的にBold Rulerの系統が2筋。血量は1/128 + 1/64で3/128。初仔なので産駒の傾向がどうなるのかは未知数だが、母馬の体重はデビュー時450kgとそれほど大きくない。ステイゴールドが強く出てしまっているのか。
本馬は5代血統表では完全なアウトブリード。
ナイトストーリー(ナカヤマジェンヌの2021)
北海道セプテンバーセールで275万円で落札された牝馬。こちらも母父ステイゴールド。母母父父がStorm Catなのでここに1筋。母母母父父はBold Ruler自身。血量は1/128 + 1/32で5/128。
母馬はデビュー時430kg。半きょうだい達も大体450kgくらいまでの小さい体で出てしまっているが唯一父サウスヴィグラスの産駒は500kg台とデカい。まあサウスヴィグラスからみて4代前の位置にBold Rulerがいるからこの組み合わせだとBold Rulerが3筋になってデカ馬因子が強調されるのだろう。
大井でデビュー予定。
母馬のBold Ruler系統1筋のタイプ(少しデカ馬信用度が下がる)
その他、母方の血統にBold Rulerが1筋のみ入っているタイプの産駒として以下の馬が挙げられる(順不同)。
- ホワイトリバー(サダムノンノの2021)
- ルクスクロワール(サトノルミナスの2021)
- ボイラーメーカー(ルージュクーラーの2021)
- ブリーチング(ブリガアルタの2021)
- ヒルノグエル(ヒルノリスボンの2021)
- タイキトレコローネ(クラウンアゲンの2021)
- フィールザビュウの2021
- タイトルパートの2021
ただ1筋のみの馬のきょうだいを調べてみると父馬を問わずに大きな馬が出ているわけではなさそうで、今回の有望株ピックアップの意図からは外れる。そもそもタスティエーラとの成績比較で出した他5頭の母父マンハッタンカフェ産駒もいってみればBold Ruler1筋馬なわけで、1筋でも入っていればすなわちデカ馬になって好走が期待できるというようにはならない。やはり2筋、できれば3筋が欲しい。
おまけ:2022年産駒で見つけた有望株
2022年産駒の中でも、Bold Rulerが3筋以上入っている有望株が目についたので、気が早いが来年のPOG用に控えておこうと思う。
エテの2022
母父Congratsの牡馬。母馬のエテは地方2勝。本馬の母父父がA.P.Indyで2筋分。本馬の母母父父がStorm Catで1筋。本馬の母母父母母のSurgeryが実はBold Rulerの孫で1筋。本馬の母母母父母のDue Dillyが実はBold Rulerの孫で1筋。本馬の母母母母父がRaja Babaで1筋と合計で6筋もある。血量は1/128 + 1/64 + 1/128 + 1/128 + 1/128 + 1/64で1/16。ここまで筋が入っていたらさぞかしデカ馬因子のオンパレードだろうと思ったら母馬エテの体重はデビュー時462kg、初年度産駒エイシンヒカリとの仔はデビュー時426kgと肩透かしを喰らう(一応ヴィクトワールピサとの仔はデビュー時466kgから490kg台まで行っている)。
アルカイクスマイルの2022
母父クロフネの牡馬。母馬のアルカイクスマイルは中央で新馬戦のみの1勝だが、体重は530kg台と申し分ない。本馬から見て母父父にあたるフレンチデピュティの中に1筋あることは先述の通り。母母父父母のSecrettameというのがSecretariat産駒なので1筋。母母父母父のReviewerというのがBold Ruler産駒なので1筋。母母母父父がSeattle Slewなので1筋の合計4筋ある。血量は1/64 + 1/128 + 1/64 + 1/128で3/64。
キラークイーンの2022
母父マジェスティックウォリアーの牝馬。母馬キラークイーンは中央未勝利馬で体重450kgくらい。初年度産駒の当馬がどれくらいの大きさに出るか。
マジェスティックウォリアーはA.P.Indy産駒であり2筋。マジェスティックウォリアーの母方、当馬から見て母父母母母にあたるTake HeartというのがSecretariat産駒なので1筋。当馬の母母がノンコノユメの母で有名なノンコなのだが、これがアグネスタキオン産駒なので1筋。合計4筋、血量の合計は1/128 + 1/64 + 1/128 + 1/128で5/128となる。
おわりに
今回はサトノクラウンの相手牝馬にBold Rulerが入っている馬を有望株として機械的に(手作業だけど)抽出したが、作業を通じて同じBold Rulerの子孫でもデカ馬因子を伝えやすい馬、伝えにくい馬の差異もありそうだという事が少しずつ見えてきた。
また、たとえば2筋持っているA.P. Indyだが、2筋分にあたるからこの馬が入っていればデカ馬確定になるかというとそんなことはなく、むしろ血統表の遠い箇所にあるBold Ruler産駒同士で2筋、などの方がデカ馬因子をよく伝えている印象を持った。これはAという馬とBという馬の配合があったとき、Aの側ばかりに沢山筋が通っていても産駒に最終的に伝わったのがB側の特徴だったりすると筋の多さが無意味になってしまうからだろう。その点、父馬の中にフレンチデピュティ(=Bold Rulerの筋持ち)が既にいるレインボーラインなどの方がデカ馬因子を覚醒させる相手探しは容易いだろう。
サトノクラウンの相手牝馬にはほどよく散ったBold Rulerの筋が沢山存在した方が良い、という個人的に採用した仮説が、上に挙げた馬達の活躍で立証されるのかされないのか結果が楽しみである。
↓以下は1年後の結果発表記事!
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